【詩】Mirror
鏡は嘘吐きだ。
外にいる私は、あなたの代わりに笑顔を作る。
あなたの叫びを、気付かせないように。
誰かが鏡に映る私を見ても、同じ私が映っていると思うだろう。
生きたいと願う私が映っていると思うだろう。
死にたいと願う私が映っていると思わないだろう。
同じ私。
違う私。
私が一人だと思う人がいるなら、その人は私を全く知らない人で、私を完璧に知っている人だ。
私は一人じゃなく、一人だ。
矛盾している。
生きたいと願いながら、死にたいと願う。
死にたいと叫びながら、生きたいと叫ぶ。
どちらも欲しいなんて、そんなわがまま。
許されるわけがないよ。
でも、私は幸せにもなれなくて。
私は不幸せにもなれないんだ。
誰かより幸せで、誰かより不幸せ。
そんな相対的な幸せも、不幸せも、要らない。
凄く幸せか、凄く不幸せか、どちらかが欲しい。
私を一括りに染めてしまう、そんな強さが。
私を殺して、鏡に映る私も殺すか。
鏡に映る私を生かして、私も生かすか。
片方は、私を壊すだけ。救わない。
二人に分かれた私を、救わない。
鏡は嘘吐きだ。
そこにいる私は、私なのに、私じゃないのに。
私も、私じゃない私も、結局は映してはくれない。
*
深夜の鬱シリーズの作品です。
深夜でなくても鬱的な作品は書きますが、とりわけ深夜にはきついのでこの名前を冠しています。
鏡は嘘つきだと思いませんか。
私という人間は、肉体と精神の両方で出来ているのに、鏡が映してくれるのは、自覚ある私の、肉体の部分(結局それは、他人が私を見て、私だと思っている外側の私と同じだと思います)だけ。
なのに、私を映している、なんて、あつかましい。
私は鏡が嫌いですが、それは別に今作のコンセプトとは別の理由で嫌いなんですが、その嫌い、というところから、こうした別の見方が生まれました。
私は一人ではないし、かと言って二人でもないとは思いますが、あえて二分するとすれば、生と死、それぞれを見つめる私に分かれると思います。
鏡が映してくれるのは、生を見つめる私だけです。
人の目に映るのも、そればかり。