夢って遠いね

ほっと一息つきたいあなたに、ささやかな憩いの時間を。

【詩】Mirror

 鏡は嘘吐きだ。
 外にいる私は、あなたの代わりに笑顔を作る。
 あなたの叫びを、気付かせないように。
 誰かが鏡に映る私を見ても、同じ私が映っていると思うだろう。
 生きたいと願う私が映っていると思うだろう。
 死にたいと願う私が映っていると思わないだろう。
 同じ私。
 違う私。
 私が一人だと思う人がいるなら、その人は私を全く知らない人で、私を完璧に知っている人だ。
 私は一人じゃなく、一人だ。
 矛盾している。
 生きたいと願いながら、死にたいと願う。
 死にたいと叫びながら、生きたいと叫ぶ。
 どちらも欲しいなんて、そんなわがまま。
 許されるわけがないよ。
 でも、私は幸せにもなれなくて。
 私は不幸せにもなれないんだ。
 誰かより幸せで、誰かより不幸せ。
 そんな相対的な幸せも、不幸せも、要らない。
 凄く幸せか、凄く不幸せか、どちらかが欲しい。
 私を一括りに染めてしまう、そんな強さが。
 私を殺して、鏡に映る私も殺すか。
 鏡に映る私を生かして、私も生かすか。
 片方は、私を壊すだけ。救わない。
 二人に分かれた私を、救わない。
 鏡は嘘吐きだ。
 そこにいる私は、私なのに、私じゃないのに。
 私も、私じゃない私も、結局は映してはくれない。

 

 

深夜の鬱シリーズの作品です。

深夜でなくても鬱的な作品は書きますが、とりわけ深夜にはきついのでこの名前を冠しています。

 

鏡は嘘つきだと思いませんか。

私という人間は、肉体と精神の両方で出来ているのに、鏡が映してくれるのは、自覚ある私の、肉体の部分(結局それは、他人が私を見て、私だと思っている外側の私と同じだと思います)だけ。

なのに、私を映している、なんて、あつかましい。

私は鏡が嫌いですが、それは別に今作のコンセプトとは別の理由で嫌いなんですが、その嫌い、というところから、こうした別の見方が生まれました。

 

私は一人ではないし、かと言って二人でもないとは思いますが、あえて二分するとすれば、生と死、それぞれを見つめる私に分かれると思います。

鏡が映してくれるのは、生を見つめる私だけです。

人の目に映るのも、そればかり。